「ぶつかったの?」
敬語をつかうことも忘れて、雪乃は尋ねた。

 すでに布団からは上半身が起き上がってしまっている。

「速度はゆっくりやったから大きなクラッシュではなかったんやけどな、その壁は見事にオジャンにしてもうたわ」
和美が笑みを浮かべながら言った。

「ええっ!?」

「今思えばな、ハンドル切るとか・・・そもそもエンジン切っちゃえばよかったんやけどなぁ。さすがに小学生やと思いつかへんかったわ」
思い出すかのように和美は声を出して笑った。

「その後はどうしたんですか?逃げたんですか?」

「あんな、ブルドーザーってすごいねんで。壁にぶつかってもまだエンジンは止まらずに進んでゆくんや。で、さすがに近所の人が走ってきてなあ。あわててエンジン止めてくれてん。その後は大変やったでぇ、親も先生もみんな泣かしてもうてな」

「弁償とか大変でしたでしょうに」