その時、廊下を歩く職員が、
「これより就寝準備!」
と声を上げた。

 各居室の鉄格子の鍵が開けられ、順番に布団を取りに行ったり歯磨きなどをしだす。よく分からないまま、雪乃も2人にならって動いた。

 洗面台に立って、居室の数を数えると全部で12部屋あるのが分かった。1部屋3名くらいとしても全部で36名いることになる。

 何人かは洗面台で一緒になったが、年齢も容姿もさまざまで、20代から60を超えていそうな人までいた。意外なのは皆なごやかな雰囲気で、居室に戻る時にはお互いに『おやすみなさい』とにこやかに挨拶までしていた。


 部屋に戻ると各居室の点呼がはじまる。職員が各々の番号を呼び、それに返事をするのだ。

「33番!」
の声に、雪乃は、
「はい!」
と大きな声で答えた。


 何かに負けたような気がしたが、それが何なのかは分からなかった。