靴底を和美のほうに見せると、和美はその靴を受け取り底の部分に指をすべらせた。

 靴底は物がしまえるように改造してあり、開けると小さなビニール袋に入れられたカプセルが数個入っていた。

 それを取り出すと、ビニール越しによく観察をする。

「フン。上物っぽいね。いくらなん?」

「イクラガイイ?」
男はわざとじらすように言った。

 和美は鞄の封筒から数枚札を抜き出すと、周りを確認しながら男に手渡した。
「これでいいでしょ」

 男は何かいいたげだったが、やがて肩をすくめると、
「オッケー」
と自分のポケットに無造作に押し込んだ。

「ポンプはないんか?」
ポンプとは注射器のことである。

「ベツリョウキン」

 和美は舌打ちすると、1000円だけを男に渡した。