「恋愛ってなんなのでしょうか?人を好きになるってどういうことなのでしょうか?」

「33番があの男の子を想う気持ちのことでしょう。さ、歩きなさい」
職員は雪乃をうながした。

 ようやく雪乃が、ゆっくりと部屋の方へ歩き出した。

 部屋がようやく見えてきた頃、雪乃は前を向いたまま語った。

「私の想う気持ち、それが分からないんです。もしかしたら、私は彼のことなんてこれっぽっちも愛していないのかもしれない」


 今度は職員があっけにとられて立ち止まったまま、歩みを進める雪乃を唖然として見るしかなかった。