植園のいらだちはピークを迎えようとしていた。そしてそのことを誰よりも敏感に察知しているのは、まぎれもなく吉沢だった。
今、植園は誰かと電話で話している。クールな受け答えをしているが、顔の紅潮と眉間のシワの深さから、それが決して吉報を伝える内容ではない、と確信していた。
受話器を気持ち乱暴に置くと、
「吉沢くん!」
と怒声のような声がフロアに響いた。
慌ててそばに走りよると、植園は鼻から大きくため息を吐き出すと、
「まったく!どうなってるわけ」
と、主語を使わず吉沢に言い放った。
「はぁ」
「松下野々香の行方はいまだ分からず、バイト先や大学にも顔を見せていない。おとといは名古屋で本人がクレジットカードを使っていて、昨日は大阪。なのに、彼女は見つからずじまい」
「そうですね」
他に言う言葉もなく、吉沢はうなずいた。
今、植園は誰かと電話で話している。クールな受け答えをしているが、顔の紅潮と眉間のシワの深さから、それが決して吉報を伝える内容ではない、と確信していた。
受話器を気持ち乱暴に置くと、
「吉沢くん!」
と怒声のような声がフロアに響いた。
慌ててそばに走りよると、植園は鼻から大きくため息を吐き出すと、
「まったく!どうなってるわけ」
と、主語を使わず吉沢に言い放った。
「はぁ」
「松下野々香の行方はいまだ分からず、バイト先や大学にも顔を見せていない。おとといは名古屋で本人がクレジットカードを使っていて、昨日は大阪。なのに、彼女は見つからずじまい」
「そうですね」
他に言う言葉もなく、吉沢はうなずいた。