「何言ってんねん。酒はやめれても煙草はやめられへんわ。あんたらホンマにお子ちゃまやな」
白い煙が宙を漂い、遠い空に向かって薄れてゆく。

 雪乃はそれを眺めながら、
「ここに来てずいぶんたったような気がします」
と言った。

 すでに10日の拘留期限は延長され、12日がたっていた。和美はすでに起訴されており、本来ならいつ拘置所に移されてもおかしくないのだが、おそらく拘置所の空きがないせいか未だここにいた。

「でも雪ちゃん、切手からDNAでたんやろ?だいぶ有利になってきたやん」

「和美さんには感謝です。私なら絶対思いつかないですもん」

 和美はくすぐったそうに笑みを作ると、
「まぁ犯罪には詳しいからな」と言った後、真面目な表情にもどし、
「あとは雪ちゃんが松下野々香に覚せい剤入りのケースを渡されたっていう証拠がほしいな。それで無罪放免やわ」
と言って雪乃を見つめた。