母親が涙を流しているのに和美は気づいた。

 おろおろと、母親はすがるように父親の服の袖をつかんだ。
「お父さん、ねえ・・・」

「お前は黙ってろ!」
顔を真っ赤にして怒鳴った。その声に、母親は萎縮するように肩をそぼめた。

「2度も裏切られたお前の信頼度はゼロや。その信頼はこれから自分で回復しろ。1年たつまで家に来ることも電話することも許さへん」

「見捨てるんだ?」
箸を投げ捨てるように放り出すと、和美は言った。

「なんだ、その態度は!」

「そっちがケンカ売ってきたんやろうが!うっせ~んだよ、いちいち」

「やっぱり何にも変わってへんのやな、お前は」
なぜか父親は笑みを顔に浮かべた。

 和美はふてくされて顔をそむけた。

「もう話すことはあらへん。勝手に生きろ」
そう言うと、父親はレシートを持って立ち上がった。

「和美!」
父親に手を引っ張られて立ち上がりながら母親は叫んだ。