「ええ加減にしいや、健一!
可愛い依頼人が来る度に、セクハラするんやめろっていつも言よるやろ!
ホンマにもう…!も、目撃するあたしとミナミんの身にもなって!」
「俺は平気だ。もう慣れた」
真っ赤になる藍衣とは裏腹に、さらりと答える南。
「まあまあ、藍衣ちゃん。妬いちゃダーメ♪大丈夫だよ。俺の本命は、藍衣だけ……」
「誰も妬いてへんわ!!」
目の前で繰り返されるツッコミとボケ。いわゆる夫婦漫才のようなものを目にし、麻里乃はただただ唖然とするばかり。
「健一!さっさと看板立ててきぃ!」
「はいはーい♪」
健一は外へ出て、看板を立て直した。
“只今相談中”──。
看板を立て直してきた健一と共に、やっと悠季が戻ってきた。
「悠季!あんた遅いねん!依頼人お待ちかねやで」
「いや、私は大丈夫ですよ…?」
怒る藍衣を、なだめるように麻里乃は控えめに言う。
だが、その目は悠季に釘付け。
すごい、綺麗な顔立ち…。
緑色の目がよく似合ってる。
そういえば、この人だけじゃなくて…藍衣って人も可愛いし、他の男の人もかっこいい。
その中でも…この悠季って人は、人一倍素敵なんだけど……。
思わず見惚れる麻里乃。
悠季も彼女に目を向けた。