「はっ!もしかしてあんた依頼人かいな!?」
「え!?まあ…依頼というか相談に…」
「マジでか──!!」

藍衣は、“本日の客第一号&久々の依頼人”ということで大きく飛び跳ねて喜んだ。

「みんな──!!依頼人やで、相談室に連れていくけんな!!」

藍衣は、2階に続く“立入禁止”と札がつけられた階段に近付いて声を張り上げる。
それから、麻里乃を店の奥へと誘導した。



“相談室”と、部屋の扉にはプレートがかけられている。

中は殺風景で、部屋の中には一つのおしゃれなテーブルに、それを挟むようにこれまたおしゃれな椅子が2つほど置かれているだけ。

「ちょっとここに座って待っといてな」

優しく笑う藍衣の言葉に甘えて、麻里乃はちょこんと椅子に座った。


「ったく、何だよー。せっかく寝てたのにぃー」
「文句言わんと!ドラマの依頼から、ずーっとなかった仕事が来たんよ!ってか、今は10時やで!?店はとっくに開いとんよ!」

しばらく待っていると、寝癖がついた奇抜な髪を掻きながら、健一が部屋に入ってきた。

「依頼人…?」

まだ半開きな健一の目に、麻里乃が映る。

「あ…えと、こんにちは」
「か…かわい娘ちゃん発見!!」

気付けば麻里乃は、健一に抱きしめられていた。