「なぁ、悠季。あの子はどないするん?」
「どうするかは、本人に聞けばいいよ」
「え!?」
悠季が眠っている少年を見る。
それに促されるように、藍衣も彼に目を向けた。
「すいませんでした」
「!」
目を閉じていた少年はどうやら起きていたらしく、静かにそうつぶやいた。
「あんた…いつから起きて…」
「ここに連れてこられた時には起きてました」
ということは、少年は、悠季の推理もミカの自白も全て聞いていたことになる。
なんて声をかけたらよいかわからず、藍衣たちが戸惑っていると、少年が先に沈黙を破った。
「俺、本当はわかってたんです。ミカさんが俺を利用してるってこと、他に好きな人がいること。
わかってた…。どんなに想ったって、どんなに尽くしたって、彼女が俺を見てくれることなんてないことぐらい。
だけど、それでもよかった…。
川瀬さんには悪いけど、俺だけが彼女の素顔を知っていると考えると、嬉しくて仕方がなかったんです」
遠い目をして言う少年。
その虚ろな瞳には、涙がたまっているように見える。
きっと、彼にとってミカは“光”のような存在だったのだろう。