昼だというのに、誰の目にもつかない路地裏は薄暗かった。
息を潜めて麻里乃を襲う機会を伺う少年。
それを見つつ、同じように息を殺して潜んでいるのは藍衣と南。
麻里乃はなるべく自然に振る舞おうと頑張るが、襲われるとわかっているからか、警戒心が見え隠れしている。
それに気付いているようで、少年はなかなか動かなかった。
すると──。
ピリリリリ!
「うわぁ!?」
麻里乃の携帯が鳴った。
「あ、はいっ」
〈大丈夫、藍衣と南が絶対君を守るから〉
電話に出た麻里乃は驚いた。
なんと、かけてきたのは悠季だった。
麻里乃が悠季と話していたその時、
「死ね!川瀬麻里乃!」
「きゃっ…!?」
隙のできた麻里乃に、少年がナイフ片手に飛び出した。
「させへんで!」
藍衣と南が遅れを取ることはなく、麻里乃の前に立ちはだかった。
「お前らか…ミカさんの邪魔をしてる奴は…!」
「あんたこそ…コソコソして…趣味悪いっちゅーねん」
ナイフを構え、こちらを睨む少年を、藍衣はまっすぐと見すえた。
「藍衣」
「うん、大丈夫。先に川瀬さんを店に連れてっといて」
「了解」
麻里乃を連れ、南は路地裏を出ていった。
「さあて、ナイフを捨ててもらおうか。ストーカー少年」