先程までのひょうひょうとした表情は一変し、真剣かつ怒りに満ちた目をミカに向けた。

「今までずっと一緒にいた友達を、平気で苦しめるような真似をする奴のことなんざ、わかりたくもねえよ」

冷えた目のまま、健一はミカを店へと連れていった。


  *   *   *


午後2時まで、あと30分。

普通なら、麻里乃は今家を出て、らぶはぴのもとへと向かうはずなのだが、昨日の作戦通りに早めに家を出て、街をぐるぐる歩いている。

その後ろを、藍衣と南は追い掛けていた。

「まだ出てこぉへんな、ストーカー犯」
「そうだな。一応、犯人の目につきやすいように街を歩き回ってはいるんだが…」

麻里乃は、昨日悠季に言われた通り、“一人ショッピングを楽しんでいる女子高生”を、きっちりと演じている。

彼女を歩き回らせているのは、ストーカー犯をおびきよせるためなのだが、写真に写っていた人物と同じ男はなかなか現れない。

「……藍衣、あいつは?」
「え?」

南が小声で呼び掛けた。
彼が指差したほうには、麻里乃と同い年ぐらいの少年がいる。

少年はなんだか妙にそわそわしていて、麻里乃をちらちらと見ていた。