「川瀬さん…あたしと同じようにならんといいけど」
「……同じになると思う」

「ええ!?」と不安げな表情を浮かべる藍衣。
そんな彼女に、南は静かに言った。

「藍衣と同じように、
裏切れて傷ついて、なにもかも信じられなくなって大泣きして、だけどいずれ強くなって、また誰かを心から信じられるようになる時がくる……。

と、思う…」

「ミナミん……」

藍衣は南の腕にぎゅっと抱きついた。

「……!?」
「ありがと、ミナミん。普通に嬉しい」

藍衣が優しく笑うと、南は冷静ながらも頬を赤くした。

「あれ?ミナミん、顔赤……」
「赤くない。人間は肌色だ」
「いや、そりゃそーやけど…」

するとその直後、麻里乃が薬局から出てきた。

「藍衣、依頼人が動くぞ」
「了解!ついてくで!」

悠季の推理によると、麻里乃は、今日2時に店に来る前に、ストーカーに襲われるとのことだ。

何としても彼女を守る、藍衣はそう心に決めていた。


  *   *   *


「こちら健一、ターゲットは只今俺の目の前にいまーす」

一方、健一はというと。

麻里乃のマンションの前で、一人そんなことをつぶやいては寂しい思いをしていた。