*   *   *


──これでよし。

封筒に、いつものようにワープロで打った紙を入れた。

そして携帯を手にし、電話帳を開く。

“沢田リク”

電話をかけると、電話の相手はすぐに応答した。

〈……もしもし〉
「沢田?あのさー、あんた随分手加減してるみたいだけど、今度は頼むよ」
〈“頼む”…?〉

携帯を持つ手が怒りで震える。

ボソボソ喋んなっつーの…!
あたしはあんたみたいなナヨナヨした男が大嫌いなのよ!

「らぶはぴの奴らがあたしらの正体を突き止めたらしい。麻里乃にばれる前に何とかしなさい」
〈…わかりました〉

電話を切ろうとした時に、沢田が呼び掛けた。

〈ミカさん……〉
「何?」

〈ちゃんとやったら、俺のこと少しぐらいは見てくれますか?〉

震える声で問いかけた沢田。

麻里乃の友達──ミカは怪しく笑った。

「うん、いいわよ。1回デートぐらいはしてあげるわ」
〈……ありがとうございます〉

電話の向こうの声が明るくなったことに、ミカはまったく気付かないまま電話を一方的に切った。

「誰があんたみたいな男好きになるかっつーの」

バカにしたようにひとしきり笑ったあと、ミカは封筒を手に家を出た。