「藍衣、着替えた？」
「ん、着替えた！」

藍衣が答えると、悠季が再び部屋に入ってきた。

「とにかく、あんま暗い顔すんなよ。お前がつっこんでくれないと、俺たちのボケは消化されずに悲しい末路を辿ることになってしまうんだからな！」

「悠季……」

にかっと笑う悠季の優しさが嬉しくて、藍衣の頬は無意識に緩む。

「ミナミんも健一も心配してた。明日は笑って、“おはよう”だからな！」
「…うん、ありがと悠季！」
「おうよ」

悠季は藍衣の頭を叩くように撫で、彼女の部屋をあとにした。

「おやすみ、藍衣」
「おやすみ」



そして翌朝……。

「おっはよー!!」

元気に２階のリビングへと向かった藍衣。
だが、そこには誰もいなかった。

「何や、まだみんな寝とるんかいな。お寝坊さんやな〜」

藍衣は右手になべ、左手にお玉を持つと、思いきりなべを叩いてカンカンと鳴らした。

「朝やでー！早よ、起きろー！」

カンカンカンカン！

大きなその音に驚いたのか、それぞれの部屋から、３人同時に飛び出してきた。

「ななな、何!?火事!?」
健一が慌てる。

「いや、地震だ」
パズルを持って避難しようとする南。

「みんな落ち着け、とりあえずまずうめえ棒を持つんだ！」
「何でやねん!!」

藍衣の蹴りがクリーンヒットし、悠季は腹を抱えてうずくまったのであった。