「お前はさ、もうあの頃とは違うから」

悠季は真剣な声で、そう言った。
それを耳にした藍衣の手がとまる。

「悠季…?」

「藍衣のことだから、依頼人の言葉聞いて、昔のこと思い出して落ち込んでんだろ」
「な、何でわかるん…」
「わかるよ、どんだけ一緒にいると思ってんだ」

藍衣の顔が自然と赤くなる。

悠季には何でもお見通しなんやな…。

「別に落ち込んでへんよ。
ただ…羨ましかった。あんなまっすぐに誰かのこと信じられる川瀬さんが。

って…彼女も友達に裏切られとるかもしれへんのに、羨ましいなんて不謹慎やな」

苦笑しながら言う藍衣。
過去の記憶がよみがえり、胸が苦しくなった。

「だからー、さっき言ったろ。
お前はもう、あの頃とは違う。お前だって、ちゃんと誰かを信じることができる」
「……そうかな…」

まだ悩む藍衣に、悠季は優しく言った。

「藍衣、俺たちのこと信じてくれてる?」

「当たり前やろ!悠季も健一も南も、みんなのこと信じとる!」

扉の向こうの悠季は、ハハッと声を上げて笑った。

「ほら、あの頃からちゃーんと成長してんじゃん」
「あ…」

何から何まで悠季にはお見通しで、藍衣はなんだか恥ずかしくなってくる。