「川瀬さん」
半分放心状態の麻里乃に、悠季が声を掛けた。
「彼女が君の郵便受けに入れた封筒の中には、こんなものが入っていた」
悠季の言葉と同時に出された封筒は、麻里乃が見たことがあるものだった。
以前、“死ね”と書かれた脅迫状が入っていた封筒と同じ物。
「“人に頼るなど弱虫がすることだ。今すぐ死ね”……。
そう、書かれとる」
藍衣が出した紙には、彼女が読んだ通りの言葉がパソコンのワープロでつづられている。
「君は俺たちに犯人捜しの依頼をしたことを、誰かに言ったか?」
悠季の問いに、ドクンと心臓が波打つ。
「み…ミカには言いました…」
「……じゃあ、あんたがあたしらに相談したこと知っとるんは、そのミカって子だけなんやな?」
震えながら頷いた麻里乃。
藍衣の口からため息が漏れた。
「……繋がったな」
南は、窓の外を眺めながら静かにつぶやいた。
「でもね、川瀬さん。君の友達が犯人っていうのは、まだ俺らの憶測に過ぎないんだ。
だから、真実を確かめるために君に協力してほしい」
「私に…?」
「ああ」
涙を拭って、麻里乃は強い目をして言った。
「わかりました。私はミカを信じてますから」