「あの、犯人は誰だったんですか？」
「……知りたいか？」
「え…？」

悠季の優しい笑顔は消えていて、彼は真剣な表情を浮かべている。

緑色の瞳はまっすぐと麻里乃を捕らえているが、どこか悲しそうだった。

「君は…どんな悲しい事実も受けとめられる自信がある？」
「あの…どういう意味ですか？」

悠季は藍衣達に視線を向ける。
彼が頷くと、藍衣も悔しそうな顔で頷いた。

「これ…見て」

麻里乃の前に、数枚の写真を並べた藍衣。

「あんたのマンションの前で撮った写真や。

この二人が…川瀬さん、あんたを苦しめとった犯人」

藍衣が出した写真を手に取り、麻里乃はそこに写っている人物に目を通した。

「えっ…嘘…！」

麻里乃は目を丸くして驚いた。

嘘でしょ…？
何で…何で…

「……ミ、カ…？」

夜に撮られたであろう写真には、マンションの前にいるいかにも怪しそうな男が写っている。

そして、もうひとつの昼間に撮られた写真には、麻里乃がよく知る相手が、マンションの郵便受けに茶色の封筒が入れているところが写っていた。