「何やねん、これ!!」

そう叫びながら、ウェーブヘアを振り乱す少女がテレビの電源を消した。
彼女は、藍衣(アイ)。

「ちょっと!いろいろ言いたいことあるんやけど!」

どうやら怒っている様子の藍衣に、赤毛に銀メッシュの少年、健一(ケンイチ)が言った。

「どしたんだよ、藍衣ー。素晴らしいサスペンスドラマのラストシーンじゃん♪」
「アレのどこが素晴らしいんですか!?」

藍衣は、先程の『アイ、アム、探偵!』というサスペンスドラマについての不満を延べ始めた。

「あんな容疑、あたし聞いたことないんやけど!?ってか、別にオレオ好きがリッツ買ったってええやんか!しかも犯人の名前“高島屋”って…どっかのデパートか!!」

「ああ。俺が演じた犯人、高島屋という名前の由来は、あの有名な百貨店からとったらしい」
「ホンマかいな、それ!?」

藍衣のツッコミに眼鏡の少年、南(ミナミ)が落ち着いた声で答えた。ちなみに、彼はこんなに冷静な男であるが、皆には“ミナミん”という愛称で親しまれている。

「健一が演じた警官も、語尾が“ぜよ”って意味わからんわ!何、最後かっこよくキメよんねん!」
「そんなぁ、ひどいわ藍衣ちゃーん」と、おどけてみせる健一に、藍衣はさらにイラッとしてしまう。