“今すぐこの依頼から手を引け。
さもなくば、依頼人とお前たちの命はない”
紙には、パソコンのワープロでそう書かれていた。
「何や、コレ…」
「麻里乃ちゃんを悩ませてる犯人に決まってんでしょー」
「くっそー!ストーカーの分際で調子乗るなやぁぁ!!」
ムカついた藍衣は、いわゆる脅迫状をビリビリと破り捨てた。
「何で、俺たちが川瀬麻里乃の依頼を受けたと知っているんだ…」
南が首を傾げる。彼の疑問に、悠季も「確かに」とでも言うように頷いた。
「ミナミんの言う通りだ。
依頼人のあとをつけていたとしても、彼女も細心の注意をはらってここへ来たはずだ。
それに店の中で彼女が何をしていたかなんて、外からわかるはずがない。
依頼人が来てから、俺たち以外の客はいなかった。
つまり…依頼人から直接、俺らに助けを求めたことを聞いたんだ」
「それやったら、これをウチに送り付けた奴は限られてくるやん!依頼人の友達とか…」
「その通りだ、藍衣」
悠季は顎に手を添え、少し笑みを浮かべた。
「俺の直感ははずれてなかったかもな…」
悠季は立ち上がると、藍衣の腕を引っ張る。
「俺は、藍衣と一緒に張り込む。
健一とミナミんは、川瀬麻里乃じゃなくて、その友達のミカって奴のことを調べてくれ」
「了解!」