「ねぇ、ちょっと君達!」

麻里乃が通っている高校の前で、健一は学校から出てきた4人の女子生徒に声を掛けた。

「えっ、何急に?ってか、誰?」
「ちょっと!結構かっこいいじゃん!」
「あたし、後ろの背高い人のがタイプ!あの眼鏡の人!」

「ありがと〜♪君達も超可愛い!あ、俺達は怪しい者じゃないから大丈夫だよー☆」

きゃあきゃあ騒ぎ始める女子生徒達にも、笑顔で答える健一。
その後ろで、明らかに嫌そうな顔で南がムスッとしていた。

「ダメだよ、ミナミん。せっかくイケメンなんだから笑って!その方が情報も聞きやすいよー?」

「おかしくもないのにヘラヘラできるか。
愛想をふりまくのは俺の仕事ではない。健一、任せた」

「しょーがないなー」

藍衣以外の女が嫌いな南にとって、女子から話を聞くというのは無理な話だ。
特に、このような“イマドキ”の女子高生のノリに彼はまったくついていけないのである。

健一は諦めたようにため息をつくと、笑顔で女子生徒達に情報を聞き出した。

「ところでさー、川瀬麻里乃ちゃんって知ってる?」
「あー、知ってる知ってる!」
「ってか、うちらのダチだし☆」
「おー、そりゃ丁度いいや!ね、ミナミん♪」

健一が南にピースしてみせると、「けっ」とそっぽを向いてしまった。