「先に引いて」と、目で訴えているのがわかった。
「わかったよ、ありがと」
すごく小さなことだけど、HR委員だからと俺が損していたのは事実。
それに気付いてくれたのが、なんかすっげー嬉しかった。
俺がおとなしく先にくじを引くと、彼女は今まで見せたことのない優しい笑顔を浮かべた。
ドキッと……思わず心臓が跳ねた。
「あ……38」
今、彼女が座っている席。
窓際の一番後ろ。
誰もが座りたがる席を、俺は二枚のくじから見事に引き当てた。
そして、俺に先に引かせてくれた彼女はというと。
「さ、37番……です」
俺の一個前。
窓際の後ろから2番目。
どうやら最後に残っていた二枚のくじは、どちらも人気のある席のくじだったらしい。
日頃の行いが報われたのかも。