彼女が図書室にいる時間はたったの30分だ。


時計で時間を確認し、30分が経過すると、「失礼しました」と一言だけ残して静かに去っていく。


あと10分…。


俺が分刻みで時計を見てしまうのは、彼女と同じ教室でいられる時間があと何分なのか、気になって仕方がないから。


こんなに好きになっていたのか、と思うと、なんだか妙に恥ずかしくなってくる。


あと5分…。


話し掛けたいけど話せなくて、もどかしく感じた。


あと……1分……。



「きゃあっ!」



「!?」



小さく短い悲鳴が聞こえて、俺は反射的に立ち上がった。