緊張して一言もしゃべれないかと思ったけど、先輩がいろんな話題を振ってくれたため、沈黙になることは一度もない。
楽しい帰り道……のはずだった。
「そうだ、俺さ就職するから今月いっぱいでバイトやめるんだ」
「……え?」
突然の彼の言葉に、私は思わず足を止めた。
待って。
今、先輩から『バイトやめる』とか聞こえたような…。
「先輩…今やめるって…?」
「うん。バイトやめるよ。やっと就職が決まったんだ」
そんな……。じゃあ先輩と、一緒に仕事できなくなっちゃうの?
もう……会えなくなっちゃうの?
「君はまだ続けるんでしょ。頑張ってね」
やだ、無理。
頑張れないよ、あなたに会えないのに。
「あ、ここだよね?君の家」
気が付けば私の家の前に着いていた。
先輩……暗くなってきてたから、家まで送ってくれたんだ。
「じゃあ……」
歩きだそうとした先輩の腕を掴んで、私は引き止めた。