「ごめんな、俺お前が不安になってるなんて思ってなかった」


頭を撫でてくれるあなた。
大きくてあったかい手……。


「ホントにごめん」


「……やだ、許さない」


あたしは彼の背中に腕を回して、意地悪を言った。


「バカぁ……。ファーストキスは、もっとロマンチックなとこでしてよね〜!」


「ごめんごめん」と笑いながら、彼は泣きじゃくるあたしの手を握ってくれた。




「それで!?」



「それでって、それだけだよ?」

後日、あたしはさっそくキスの門をくぐったことを報告した。


だけどみんなの反応は、なんともしらけたものだった。


「一応聞くけど“喧嘩中のキス”以来、何回かしたんでしょうね。キス!」


「ううん」


みんながみんな、「こりゃダメだ」と大きなため息をつく。


だからあたしは、また見返してやろうて思い、彼に頼んだの。




「またチューして!今度はもっと激しいやつ!」


「ぶふっ!何言ってんだ!」


彼は真っ赤な顔で、飲んでいたジュースを噴いた。




fin.