「放してよ!」
「やだ」
後ろから抱き締められていた。
彼の温もりが背中から伝わる。
「ちょっ…痛い!」
不意に腕の力が弱くなったかと思うと、突然後ろに振り向かされ、唇に柔らかいものが触れた。
「──っ!?」
唇に押しあてられたそれは、温かくて……。
それが何なのか理解すると、あたしの顔は真っ赤になった。
「……ごめん。不安にさせて」
今度はそのまま、正面から抱き締められる。
「お前が嫌いだからキスしなかったんじゃないよ。むしろホントはしたかったけど、お前が嫌がるんじゃないかと思ってたっていうか……」
「嫌じゃないよ……。だって大好きだもん……」
「うん、俺も大好き。
けど……恥ずかしかったんだよ」
抱き締められているため、彼の顔は見えない。
でも、わかる。
きっと、あたしと同じだ。
耳まで真っ赤にしてるに違いない。