きっと、君なら…肩を掴んで、優しく頬に手を添えて、そっと触れるようなキスをしてくれるはず。
だけど、実際はそんなのではなかった。
「何言ってんだよ、バカ」
あたしの想像とは裏腹に、現実は冷たいものだった。
「ほら、バカなこと言ってないで、早く帰るぞ」
繋げ、と促されるように差し出された彼の右手。
あたしはそれを振り払った。
「手は繋ぐのに、キスはしてくれないんだ……」
「は?」
──何でわかってくれないの?
そんな苛立ちから、自然と声が荒くなる。
「あたしとキスしたくないの?
あたしはあなたとキスしたい!
いつまでも手を繋ぐだけなんて、抱き締めあうだけなんて嫌!
あなたが好きだから、もっともっとって求めちゃうの!
それって、そんなにいけないことなの!?」
あーもう、やだ。
こんなことで泣いちゃうあたし。
あたしが走って逃げようとすると、大きな手がそれを阻んだ。