俺はもう一度叫ぶ。


驚く彼女が可愛くて、自然と頬が緩み、俺が笑顔になってしまう。


絶対笑わせる、そう強く思いながらピースした。


「待ってろよ〜!」


ずいぶんベタな捨て台詞を吐いて、俺は公園をあとにした。


正直、あの綺麗な彼女を真正面から見た時、恥ずかしかった。


だけど……俺は彼女の笑顔が見たい。だから、自分の演奏でいつか絶対笑わせる。


そう思ったから、言わずにはいられなかった。


彼女は、俺のことをどう思ったんだろう。
きっと“変な奴”って、思われたよな……。


ヴァイオリンを持ったまま走るのはしんどくて、俺の息はすぐに上がる。


つーか、ヴァイオリン持って走ったなんて父さんに知られたら、「もっと大事にしろ!」とかどやされるに違いない。


「やべぇ、父さん帰る前に戻らねえと!」


休んでなんていられない。
俺は慌てて足を進めた。