今日は切なさを感じさせる曲。
例えるなら……好きな人が、彼女らしき女の子と一緒にいるところを見た時の雰囲気。
弾く曲の種類によって、弾いている本人の表情も変わるみたい。
いつもは笑顔で楽しそうに弾いてるのに、今日はすごく悲しそう。
感情を込めて弾いているのが見て取れた。
聴いてる人なんてほとんどいないのに、よくやるなー。
それかもしかして、練習中だったりするのかな…?
そんなことを考えているうちに、ヴァイオリンの音色が止まったことに気付いた。
あれ?もう終わり?
「つまんない」なんて思いながら、無意識に少年に目を向けた。
途端、ぶつかった視線。
ヴァイオリン少年は、こちらを……あたしをしっかりと見つめていた。