どれくらい経っただろう。
気が付くと、辺りはすでに夕日で赤く染まっていた。
どうやらあれから眠ってしまったらしい。
耳に届いていた音色は、すっかり消えている。
カーテンの隙間から公園を覗いてみると、ヴァイオリン少年は帰ったようで、誰もいなくなっていた。
「明日も…来ないかな」
無意識にそうつぶやく。
あたしは夜ご飯の時間まで、ベッドに潜り込んで再び眠りについた。
次の日も、その次の日も、彼は公園にやってきては、ヴァイオリンを弾き続けた。
誰もいない小さな公園。
少年の演奏を聴いているのはあたしだけだと思う。いや、彼はあたしが聴いていることも知らないだろう。
それでも、少年は毎日のようにヴァイオリンを弾いていた。
午後1時30分から始まる彼のリサイタルを聴くのが、いつしかあたしの日課となっていた。