「カットをお願いします」
澄んだ声で言った。
「かしこまりました、前髪のカットですね。では──」
「いえ……」
彼女が俺の言葉を遮った。
「全部…切って下さい」
自分の耳を疑った。
「ほ、本当に切ってしまわれるんですか?」
「え?あ、はい」
不思議そうに首を傾げる彼女。
当然だろう。
俺が急に慌てて言葉を発したのだから。
「でも…あの…本当にいいんですか…?」
「? どういうことですか?」
なおも首を傾げる彼女の髪を、俺は手にとる。
「もったいないですよ…。こんなに綺麗な髪なのに…」
気付けば俺は、彼女にそうつぶやいていた。