かわいていた、くちびるをなめる。


だれも、言うわけがない。よろこんで自分を、いけにえにする人なんていない。

だって、蛍光色のピンクのシュシュが、するどいセンサーで、異端者を見張っているんだから。


何度なめても、かわく。息苦しい。

そうだ、朝からずっと、息苦しかった。朝から?ちがう。前の晩から?


事件の日から、ずっと?


朝のニュースでかかっていた、『十四歳飛び降り自殺』の真っ赤な文字が、頭をよぎる。

席についたまま、頭をおさえた。


関係ない。


だって、菜落ミノリはろくに会話もしない、クラスメートで。

田岡だって、塾が一緒なだけで。好きな男子とか、そういうのじゃなくって。

わたしは、もしかしたら、たまたま、田岡の好きな女子を、知ってしまっているかもしれないだけで。

今までだって、ずっと、よけいなことに首をつっこまないように、してきたじゃないか。


「ジュウエンムイチさんから──となりのクラスの女子を、 好きになりました──」


真っ赤な文字の上に、ラジオで放送された声が走る。


わたしには、関係ない。