菜落ミノリが、学校から帰る道で、車にはねられたこと。
どこかの病院に搬送され、今は入院しているらしいこと。
どうやら、命に別状はないけれど、意識がもどっていないこと。
わたしは、黙ったまま、話を聞いていた。
そんなことがあるものなのか、と思った。こんなに立て続けに、わるいことが起こるものなのだろうか。
ひどいいじめを受けて、学校を飛び出した先で、車にぶつかるなんて。
「これ、クラスの大半はもう情報まわってるらしくてね。そんでさあ、みんな、ウワサしてるらしいよ」
「ウワサ?」
「うん。わざと、飛び出したんじゃないかって」
わざと。一瞬、言葉をうしなった。
わざとって、それって──
「ほら、嶋田さんに、いじめられてたじゃん?それで、自殺はかったんじゃないかって」
ジサツ。
布団のなかにいるのに、背中がヒヤッとした。
朝、目撃してしまった光景が、はっきりと思い出されて、あわてて目をつむる。
すっかり黙り込んでしまったわたしに、神妙な声で、アキはたずねた。
「・・・ねえ、ところでさ。ハチは、大丈夫?」