一組の教室に先について、お互いに「じゃあ」と言ったときだった。


すごく、いやな音が聞こえた。


聞き慣れない。なにか倒れたみたいな、音。

一組じゃない。わたしのクラス。二組からだ。

自分のクラスに入ろうとしていた田岡は、けげんな顔をして、その足を止めた。


「・・・なに?」


わたしのいる方に、歩いてくる田岡。

さあ、と首をかしげる。まだ登校している生徒が少ないこの時間に、なにごとだろうか。

一緒に、二組の入り口に立つ。

田岡が、ドアに手をかけた。


カラリ。


ドアが開く音が 耳に入るのと、映像が目に飛び込むのは、どちらが早かったのか。


教室のなかにあったのは、想像もしなかった光景だった。

想像、するわけがなかった。わたしの体は、その場に固まってしまった。


教室には、嶋田さんたちのグループの女子と、数人の男子がいた。

その真ん中で、菜落ミノリが、両手をはがいじめにされて立っていた。


鳥肌がたった。異様な、世界だった。