それに、思った。田岡のとなりにいても、いつもなら感じるはずの、違和感がない。

冷やかされるんじゃないかーとか、男子と女子だしーとか。

勝手につくっていた壁みたいなものは、昨晩、すこし非日常を共有しただけで、しめったせんべい並みに、やわくなっていて。


夜のなか、無邪気に笑う田岡の顔を、思い出す。


調子ばかりよくて、うるさい男子。

から、わたしのなかの田岡の位置づけは、すこし変わっていた。ほんのすこし、だけれど。


田岡はわりと、気のいいやつなのかもしれない。

仕組まれてるとか、どう思われるとか、計算とか。難しく考えないで、自然と、良いところだけすくえるっていうのかな。

たぶん、ちいさなことにいちいちイラついたり、気にしたり、しないんだと思う。心が、ゆったりしてる。

そういうのって、良い。そういうの、大事。


「田岡って、広大ってなまえ、似合うよね」


ゲタバコで、靴を脱ぎながらそう言うと、田岡は目をまるくして、動きを止めた。