沈みかけの太陽とおなじ色の玉が、先っぽに生まれる。赤にちかい、濃い、オレンジ。
そのオレンジに、おのおのの願いが、こもってる。
みんなが何を願っているのか、想像してみる。
アキはきっと、スミトモくんとずっと一緒にいられますように、とかだろうな。
スミトモくんは?おなじだといいね、アキ。
…田岡は?
自分の玉がゆれないように気を配りながら、そっと、田岡を見る。
田岡は、塾のテストのときよりも、もっと、すごく真剣な顔で。まゆをキリリと上げて、線香花火のさきを、見つめていた。
真面目な顔もできるんじゃないか、と思った。口には出さずに、呼びかける。
おーい。こちら、ニハシノコですー。そちら、ジュウエンムイチさんですかー。
…うわあ、アホらしい。バカだな、自分。げんなりして、小さく息をつく。
線香花火の球がゆれて、あわてて息を止めた。
田岡は、なにを願うんだろう。
・・・好きな子と、両思いになれますように?
・・・好きな子と、すこしでも仲良くなれますように?