波のプールじゃない、本当の波に押されたい。去年も行ってない。お父さんが、仕事で忙しかったから。
「お前には絶対、ロケット花火持たせたくない」
スミトモくんが田岡にそう言って、アキが笑った。
たしかに田岡は、友達のおしりめがけて打ちそうな人間、ナンバーワンかもしれない。
このメンバーのなかだけじゃなくて、学年全員をふくんだとしても。
手持ち花火があっという間に終わってしまったぶん、わたしたちは、線香花火をゆっくり、丁寧にすることにした。
「全員、同時につけてよ!?最後まで残ったひとが優勝!いい?」
細い糸のような線香花火が配られる。
アキが、一番はりきっていた。線香花火が最後まで落ちなければ、願いがかなう。そういうジンクスに弱いのが、女子。
わたしも女子だけれど、種類がちがう女子だから。アキは、どうにかしてわたしを同じ種類にしようと、がんばっているみたいだけれど。
・・・落ちなければ、願いがかなう。
手のひらで風よけをしながら、そうっと、火をつけた。