夜は、不思議。

アキだけじゃない。あたま。首。腕。出ている部分は、昼間となんら変わらないけれど、わたしの目には、男子二人の姿も、目新しいもののように、映り込む。

ずいぶん履きならした自分の運動靴も、夜行性の光虫のよう。


最初に火をつけた花火は、みどり色だった。

まっすぐ、勢いよく吹き出る光の線。発光するキュウリみたい。

おいしくはなさそうだけれど、きれい。キレイだ。

田岡の点けた色は赤で、田岡は「うわっ、まじ火みてぇ!!」とか言って、いや、火だろうよ、とわたしがこっそりツッコんでいたら、なにを思ったか、花火を口にくわえた。

でも、くわえた瞬間、消えた。


「火吹き竜になりそこねたー!」


・・・なんだそれ。

アキはピンク色。それを振り回して、宙になにかを描いている。


「スミ、ハートに見える!?」


一生懸命叫んでるけど、スミトモくんはあんまり見ていない。

火が消える前に、つぎの花火に点火しようと必死 。格闘中。目が、マジ。

だからわたしが代わりに、答える。


「うん、見える見える」

「三橋!おれ、おれ竜に見える!?」


田岡は、無視した。