その声を皮切りに、スミトモくんもアキも、そして田岡も、競うように駆けていく。
スミトモくんのみどりのポロシャツ。
アキのワンピースの赤。
田岡の、制服の白。
振り回される、水色のバケツ。
飛び散る。まるで、この姿が花火みたい。勢いがよくて、自由だ。
なにも言わずに帰るわけにもいかず、わたしも結局、三人のあとを追うはめになってしまった。
「じゃっじゃーん!!大量花火ーっ!!」
近くの公園。
息をきらしてわたしが追いついたころには、アキとスミトモくんはさっ そく、地面に花火を広げて始めていた。
ビィッとテープをはがす音。散らばる花火の棒。笑い合う、ふたり。
甘いものなんか食べていないのに、舌にじわぁ、と、糖分がにじんだ気がした。
頭のなかで、できたてのホットケーキが、バターを垂らしながらお皿にのるところを、想像する。
たちこめる、ハチミツとバターの味。香り。
息を整えて、落ち着いて見てみると、アキが着ているのは、単なる赤ではなく、花柄だった。