まさか。
暑さのせいではない、汗がジンワリとにじみだす。
そういえばあのとき、田岡とのことを企画するとか、任せろとか言っていた気がする。
急に押しかければ、わたしが逃げられないと思ったのだろうか。こうまでして、わたしと田岡をくっつけたいのか。アキ、なんてヤツ。
何と言って断ればいいものか。考えながら、とりあえず三人のもとに、歩み寄る。
「あの・・・えーと・・・」
「ハチ!塾おつかれぃ!!パーっと花火しよ!!」
今現在、まさに信用ダダ下がり真っ最中のアキが、無邪気な笑顔で言った。ちくしょうめ。
「・・・そんな急に。無理だよ、うち、お母さんうるさいし・・・」
「大丈夫、三十分くらいで終わるよー 」
「いや・・・でも・・・」
アキに、ぎゅっと両手を握られる。ねっ?と首をかしげて、かわいく笑うすがた。
丸め込もうとしている態度に、よけいに腹ただしさがふくれあがる。
わたしが文句を言おうと、口を開こうとした瞬間。
「塾、ちょっと延長だったって言えばいいじゃん」
田岡の明るい声が、打ち消した。
やろうぜ、花火。と、田岡が笑った。