でも本人に聞くのは、絶対ナシ。それはやっぱり、ルール違反っていうか、ゲームオーバーっていうか。

わたしは、わたしの目で、田岡がだれを好いているのかを見つけたかったのだ。


知ってどうこうしようっていうわけじゃない。ただ、知りたかった。

わたしだけの、とくべつを、心のうちに置いておきたくて。


なんとかして解けないものかと思って、ため息をついて顔を上げると、田岡がいた。目の前に。

わたしは、イスから落ちた。びっくりしたあまり、エビみたいに反り返って、クジラが尾びれで水をはねのけるみたいに大きな音を立てて、落ちた。


「うわっ!?三橋、大丈夫かよ!?」


田岡が、わたしに手を伸ばす。

呆然としてつかめないで いると、田岡は、わたしの腕をグッと自分の方に引き寄せて、わたしを立たせた。

無事にイスの上に戻ったわたしは、今度は鯉みたいに口をあけたまま、田岡を見上げる。


「歴史の教科書、借りようかと思って。今日あったろ?持ってる?」


そう言うと、田岡は人なつこい笑顔を向けた。