DJのお兄サンが、ハガキを読む。


──どこどこにお住まいの、中学二年生。ペンネーム、だれだれさん。


そうだなぁ。ペンネームは、なににしよう。

べつに、なんでもいい。もういっそ、だれだれさんでもかまわない。


ねえ、たぶんさ。

みんな、わたしみたいに、ひとに言えないこと、ひとつは持ってると思うのね。

自分をぜんぶ、見せたりしないと思うのね。

隠してると思う。その、隠れているものがなんなのか、わからないのに。もしかしたら、ものすごく、ひどいものかもしれないのに。

なのに、どうして、ネコかぶりの『だれか』を、好きになれるの。

ウソつきな『だれか』を、どうやって、好きになるの。


どうやって。




「どうやったらうまくなれんの?キスって」


アタマから降ってきたのは、とても明るい声だった。

ひっそりとわたしが抱えている悩みとは、格が違うお悩み。


目をあける。わたしがいるのは、二年二組の教室。

いつの間にベッドから起きて、朝食を食べて、登校してきたんだろう。寝ぼけているのだろうか。