田岡の、茶色あたま。
でも、あれ。おかしいな。
自分の顔つき、おもに目のまわりが、どんどん険しくなってくるのがわかる。
視力はそこまで悪くないはずだけれど、目を細めても、先に見えるのは、黒い頭か坊主頭ばかり。
ピタリとはまる人物は、見当たらない。
「なーに見てんのぉ?」
突然トンッと背中を押されて、あわててバランスを取った。
振り返ると、ニンマリ笑ったアキの顔。いつの間に登校してきていたんだろう。
ホッと息をはき、はね上がった肩の位置を、元に戻す。殺す気か、アキ。ここ、三階ですけど。
「・・・べつになにも」
「ふぅーん?でも、なんで野球部?」
「・・・だから、べつに意味は──」
「田岡くんいないのに」
「・・・えっ!?なんで!?」
大きな声を出してしまったわたしを見て、アキの顔がよりいっそう、ニンマリとゆがんだ。
しまった。これじゃあ、田岡を探していたのが丸わかりじゃないか。
あらぬ誤解を、自ら上塗りしてしまった。