次の日の朝。
十数分。
早く起きて、早く教室に足を踏み入れただけで、いつもとはちがう現象に、気づくことができる。
たとえばそれは、密度がすくない教室の空気がゆったりしていたり、黒板をきれいに消し直している生徒がいたりするっていうこと。
それからもう一つは、グラウンドからのかけ声。
予鈴手前のこの時間になってもまだ、野球部が朝練をしていることを、わたしは今朝、はじめて知った。
まだ、通常人口の三分の一 未満しか、埋まっていない教室。
席にカバンを置くと、窓際に近づく。窓枠に手をかけて、すこし身をのりだしてみる。
そこは、特等席だった。自分の席に座っているよりも、かくだんによく見渡せた。
グラウンドには、黒い頭がたくさん散らばっていて。
さすがにもう終わりなのだろう、体を大きく曲げ伸ばしして、整理体操をしている。
グラウンド。かけ声。野球部。と、いえば。
連想ゲームのように、頭のなかで言葉をつなげて、わたしの目は自然と、太陽光の下に、茶色頭をさがしていた。