机の持ち主──菜落ミノリは、その教科書をめくり、姿勢を正したまま、次々と問題を解いている。
・・・あんな教科書で、よく自習なんかに取り組めるな。さすが、クラストップというか、なんというか。
なかば感心に近い気持ちで、その、肉がうすそうな背中を見つめた。
しにたい。まるい鼻がいやになったときや、不機嫌なとき、わたしが、なんとなく口にすることば。
死ねよ。人から無理矢理与えられる、ナイフのことば。
それがクッキリ刻まれている菜落ミノリの教科書は、ほかの教科書よりも、ズッシリ重そうだ。
ここ数日で、嶋田さんたちの菜落ミノリに対する態度は、よりいっそう、ひどいものになっていた。
これは、予測変換内。だって、イジメなんて絶対、隕石落下レベルの出来事がないかぎり、ひどくなる一途しかたどらない。
先日はりだされた小テストの結果。いちばん上に、菜落ミノリの名前がのっていたことで、シマダ・イカリ・ボ ルテージはMAXになってしまったらしい。
「チョーシのってる、アイツ」の台詞をスタートに、ノートを破られたり、落書きされたり。