片足をつっこみかけていた宇宙から、自分の部屋のベッドに、わたしは一気に引き戻される。
え?なんて言った?いま。なんて、言った?
ベッドのうえに座り込んだまま、冷たい手に背中をなでられたような、変な寒気におそわれる。
塾でチラリと見た、田岡のサブバック。
その、はげかけた名前が、脳裏をよぎって、つながったのだ。ニハシノコ。
ジュウエン、ムイチ。
「お悩み内容はですね、」
DJのお兄サンの低い声が続けた、次の言葉に、わたしは立ち上がった。寝るどころか、座っていられなかった。
「となりのクラスの女子を、好きになりました。自分とはタイプがぜんぜん違う子で、どう接したらいいか、わかりません───とのこと。おー、なるほど!なんだか読んでいるこっちがソワソワしてしまいますねぇー!」
たいくつ。たいくつ。そんな繰り返しの気持ちが、ぜんぶ、ふっとんで。頭のなかに、巨大な花火が散る。
ソワソワ?ううん、ソワソワどころじゃない。うそ。
うそ。
うそ。こんなことって、ある?
予測変換不能事態。
眠れない。ふぁ~っとした、わたげの眠気は、もうやってこない。