携帯を手に取る。アキからだ。
パラリ、と髪がほおに落ちてきて、かわききっていなかったのか、ヒヤリとした感覚をのこす。
『ごめんね。スミと先に、洋ナシチーズケーキアイス食べてきちゃった』
開いてみると、書いてあったのは、おおかたそういう内容だった。
語尾に飛び散るハートが点滅していて、夜なのに、真っ昼間みたいににぎやか。
知ってる。ブログ読んだから。
っていうか、そもそも、一緒に食べるつ もりだったのは、勝手にダブルデートの妄想をしていた、アキの頭のなかだけだ。
アキ。スミトモくん。わたし。田岡。アキ。スミトモくん。わたし。田岡。何回唱えても、ありえない四人。
っていうか、わたし、チョコレートがゴロゴロ入ってる系のやつのほうが、好きだし。
画面の電気がフッと落ちて、黒くなったそこに、わたしの顔がうつる。
なんの特徴もない顔が、お風呂につかったせいで、のっぺらぼうみたいに、さらに印象がうすい顔になった気がした。