「いいな、花火」


伸びをしながら、田岡が言った。


「今度は、海に行ってやろう。打ち上げ花火!」

「うん、奮発しよう!でっかいの!!」

「でっかいのな!おれからも、スミに連絡しとく」


そうだね。でっかいの打ち上げて、ギャアギャア言って、ロケット花火を田岡があぶないところに打って、スミトモくんが怒って。

そのときが、たぶん、わたしたちの夏のはじまり。


わたしたち、暴力レッテル組だけどさ。

だいぶん、スマートに生きるの、むずかしくなってるけどさ。

ちょっと休息して、息を吸って、肺を満タンにしたらさ。二学期から、負けずに頑張っていこうね。きっと、頑張れるね。


田岡が、サクッと砂を蹴る。

すきまなく埋まった、円。百パーセント。

そして田岡は、わたしに言った。


「・・・それからさ、三橋」


たぶん、オトナになっても、わたし、このセリフは、一生忘れない。



「・・・菜落の病院、一緒に行ってくれる?」



――ほら。


『好き』から広がった世界には、こんなにすてきなことがあるんじゃないか。