田岡の目から、涙がこぼれた。

つうっ、とつたったそれは、次から次にあふれて、土の上に落ちていく。

中学生男子がボロボロ泣くのを、わたしははじめて見た。


わたしも泣いていた。

とても切なかった。


田岡の涙を、きれいだと思った。

田岡が、好きだ。そう思った。


暗やみの涙も、こみあげる唐突な気持ちも、たしかではないかもしれないけれど。

恋とか愛とか、そんなきれいな、完成されたものではないかもしれないけれど。


好きだと思えた。

たくさんの思いをかかえて、それでも笑う田岡も、自分を嫌いになりたくないと言った田岡も、砂にすれた靴も、土に落ちた涙も。

田岡のホントウを見つけだした菜落ミノリも、彼女が書いた、星の馬も。


涙が止まらなかった。悲しみじゃない涙が、たくさんたくさん、あふれてこぼれる。


わたし、全部、きらいだと思っていた。

ウソつきばかりで、本当はひどいものかもしれないのにって、そう思って、全部を最初から、はねのけていた。


すきに、なろうとしていなかった。

この世界には、ちゃんと、すきになれる人もモノも、たくさんあったのに。