「わたしにとっての、菜落さんはね。ものすごく、優等生っていうか」


それは、ほんの一部だったのかもしれないけれど。すくなくとも、わたしから見た、菜落ミノリは。


「なんでも、完ペキにこなす女子だったの。宿題も忘れたことなんかなかったし、英語訳も、すみからすみまで全部やってた。係の仕事だって、日直だって、人から言われる前に、全部終わってたの。全部。中途半端なことは、しない子だったと思うの」


ねえ、だからわたし、思ったんだ。

思って、それを、田岡に、伝えたかったんだ。


「菜落さんは、作りかけの話を、放り出したままにする子じゃ、ないと思う。田岡の・・・田岡の世界を、広げっぱなしにしたまま、どこかにいってしまったりしないと思う。だから、」


信じたいって、思ったんだよ。


「だから、わざと飛び出したり、してない。きっと、してないんだよ」


――わたしが、証明する。

それだけは、くちびるをふるわさずに、言えた。


きっと、を、信じたかった。

全部が全部、都合のいい解釈かもしれないけれど、わたしは、菜落ミノリをなにも知らないのかもしれないけれど、信じたかった。


だれかがだれかを好きになることが、すてきなものだって、信じたかった。